板書は授業者の力量を表す鏡

3学期の時の早さを表す言葉に、「住ぬる(1月)、逃げる(2月)、去る(3月)」と言われます。4月までは入試や新年度募集と怒涛の繁忙期突入です。苦しいときほど笑ってニコニコ福を呼び込みましょう!

と、その前にちょっと小話。
皆さん、「太極マーク」って知ってますか?図でいうとこんなやつです。

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太極マーク

このマークは陰陽思想が由来でして、簡単に説明すると黒い部分が「陰」で白い分が「陽」の意味があり。相反するものが同居している状態を表しています。また、上下にある色が反転した小さい〇が入っていることっでお互いのバランスが完全な状態であることを指しています。つまり、1つの考えや方法では解決できないことが多く、一見すると相反する2つのことを成立させることで成果がでるというメッセージだと僕はいつも解釈をしています。今の時期高3・中3の志望校合格に向けて全力で指導をしつつ、4月の新年度の生徒数を見ながらお問い合わせいただいている各家庭に対して丁寧に対応して入会いただけるよう時間をいかに捻出するか教室長の先生方は四苦八苦されていると思いますが、是非この太極マークのようにバランスのとれた時間の割り振りで受験結果も生徒数も取れるよう日々一緒に頑張っていきましょう!

では、今回のテーマ「効果的な板書術」について書いていきます。
そもそも板書には「授業の進行をスムーズにする。」ための授業内における小道具としての役割と、生徒が板書をノートに写した後に活用する「ポイントを書いたメモ」の役割があると思っています。

 

前者の視点でいうと、「いかに生徒にストレスなくわかりやすい板書」であるかがポイントになるのでやはり「視認性」=「見やすさ」が大事になってきます。
「視認性」を僕なりに要素分解すると、①レイアウト②色使い③文字の大きさの3つになります。以下3つの観点ごとのポイントになります。

その1.レイアウトは3分割すべし

僕はホワイトボードを三分割して使用します。そして列ごとに役割やルールを設けるようにしています。

【左端】:今日の授業テーマ、ポイントのまとめを書く。

この列は1回の授業中ほぼ消しません。皆さんも経験があると思いますが、メモなどが無い状態で話だけを聞いていると、話者が伝えたいポイントが今どこなのか、前の話とのつながりなどが分かりにくく結果として話の最後の印象だけが記憶として残っていることってありませんか?大人でそうなるのであれば子供たちなら猶更です。そこで授業テーマや授業で扱う公式等は消さずに置いておきたいのでこの列に書いておきます。書き残しておくことで授業者は授業の中で折に触れて説明したり、確認することで生徒の記憶定着に効果を発揮します。

 

【中央】【右端】主にこの2つのスペースで例題や演習問題を書いていきましょう。

ここで気を付けるべきポイントは、列内での改行や列を跨がないことです。
なぜそこまで重要なのかというと、下の写真を見比べてみてください。

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改行してない数式

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改行した数式


改行することで視認性は下がりますし、無意識に我々の思考も改行したことにより思考の分断が起こっているのがわかっていただけると思います。なので意味のない改行は生徒の思考の混乱を招くのでしないようにしましょう。

その2.色はそれだけで意味をもつ

一般論としてホワイトボードで板書をする場合、使用する色ペンは3色(黒・)です。色の使い分けですが一般通念として色がもつイメージと同じにしておくことは大事です。例えば、から連想されるモノをイメージしてみてください。血・サイレン・赤信号など、色から連想するイメージは【危ない】【緊急】などではないでしょうか?逆に、から連想されるモノは、青信号・空などで色のイメージとしては【安心】や【落ち着く】といったイメージです。ですので、僕は赤と青色の使うルールは以下のようにしています。

公式・概念など授業内で一番大事なもの。
  図で生徒が認識しやすいように強調したいとき。

赤ほど重要ではないものを強調するとき。
  図を強調する際に既に赤を使っているときの色で区別したい場合。

また使う色を3色に限定する理由はがあります。使用する色が増えると自ずと類似色(例えば赤とオレンジ)が増えます。結果、生徒がノートを見た際に多色であるがゆえに授業者が授業で伝えたい箇所がかえって見にくくなります。ただし多色の方がいい時もあって、理科の炎色反応や試薬の色など試験問題で問われるものが「色」の場合は、色を視覚情報としてインプットしてもらった方が覚えやすいので使ってもいいと思います。

 

その3.文字は丸字で大きくが基本!

文字の大きさに関しては言うまでもありません。生徒が見やすい適切な大きさで書きましょう。また字が汚い先生は丸字にするのがポイントです。ホワイトボードは楷書体のフォントは見にくいです。(個人的な感性かもしれませんが)一方、丸字はある程度字の汚さを曲線の柔らかい印象でカバーできるので見やすい印象にはなると思います。レイアウトの部分で触れていますが文字が大きすぎて不要な改行または改列になるようなことは避けましょう。

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丸字は印象が良い!?

以上が板書の「視認性」についてのポイントでした。

 

板書でもう1つの大事な観点として「再現性」について触れておきます。生徒達に「数学のテスト勉強をするときに授業ノートを見直したことがあるか?」と聞いて「見直している。」と答えた生徒に未だかつて出会ったことはありません。是非、他の先生方も聞いてみて下さい。この生徒達の回答に隠されている残酷な真実は先生方が一生懸命に準備をして書いた板書が生徒達にとっては「その場限りのメモ」としての消費物とされていることです。またこのことを象徴する場面としては、生徒がテスト前などに質問にも表れています。生徒達はよく「どうやったら解いたらいいかわかりません。」と言って質問してきます。これは「解法を暗記していないので、解く糸口がわかりません。」と言い換えることもできます。

前のブログでも触れましたが、我々授業者にとって最も大事なことは、生徒が理解した授業内容の定着度をいかにあがるように勉強させるかです。そのためには、消費物になっているノートを生徒が振り返りができる「参考書」に昇華するために僕がしてきた改善は、「授業ポイントので使う言葉の選択や表現」です。

授業ポイントの言葉の表現は、短く!キャッチーに!

フォレスタの使用方法のポイントにもあるように、「説明は短く、早く」の目的と同じで生徒達の記憶にいかに残すかという点においてポイント説明に使うフレーズは「短く!キャッチ―に!」にします。使う言葉や表現もイメージしやすすく生徒の語彙レベルに合わせたものにします。

例えば、数学B『ベクトル』で成分という概念を学びます。ベクトルとは大きさと向き持った量と定義されるもので簡単にいうと矢印です。この単元を指導する際に僕が実際に書く板書はこんな感じです。

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ベクトル

このベクトルで登場する成分とは同じ矢印を書けるようにするための統一規格のことで、(3,4)と書かれていたら矢印の横の長さ(x成分)が3、縦の長さが(y成分)4であることを表しています。ここで伝えたいことは、矢印を横と縦に分解している情報を図にしておくことで矢印の長さは、直角三角形の斜辺ということがわかり、ベクトルの長さは三平方の定理を用いて成り立つことが理解しやすくなります。また、2つのベクトルの成分の足し算の際に、成分は矢印の横と縦の長さであることが理解できているので、特段説明しなくても生徒達は直感的に同じ成分同士を足し算してくれます。

 

板書は授業者の力量を調べる試薬

ここまで読んでいただくとわかると思いますが、実は板書は授業者の力量を如実に表します。昔あるカリスマ講師が講演会で話していたことです。

授業の力量は、板書の技術が最初に伸びて、その後に話法の技術が伸びる。そうすると螺旋階段のように次はまた板書の技術が伸びて、話法が伸びる状態を繰り返す。

あれから10数年経って、この言葉は1つの真理だと自分の体験を通じて思っています。集団授業の先生方、是非一度自分の板書で生徒達が演習中にどんな解き方をしているか机間巡視してみてください。先生方のスキルアップの種は生徒達が教えてくれていますよ。飽くなき自己否定の先に生徒の最大多数の成績アップが実現します。

 

次回は、授業中における授業者の所作・話法についてです。効果的な発問は?声の大きさは?効果的な目配せとは?板書と双璧を成す授業者の所作・話法がもたらす効果を余すことなくお伝えしたいと思います!!

 

最後になりますが、集団の先生方いつもお待ちしています!同意点・相違点教えてもらえるとありがたいです!よろしくお願いします!!