奥の深い所作の効果

人は見た目が9割!?

前々回は授業者が指示を通すときに必要なこと(指示が通るまで待つ)をお伝えしました。今回は授業者が指示した内容がより伝わりやすくなるための所作についてまとめたいと思います。

 

人は見た目が9割」という本が以前話題になりましたがこれは「メラビアンの法則」と言われるものです。

メラビアンの法則とは、コミュニケーションにおいて人が受け取るメッセージは、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%というものです。

ただ、巷では「人が何かを伝えるときに、話の内容はほとんど意味がなく見た目などで判断されやすい。」と認識されているようですが、実際は「何かの感情を伝える際に受け手が判断するための情報として、非言語領域の情報(視覚・聴覚情報)で感情を判断している。」ということらしいです。つまり、話し手が「楽しい」内容(言語領域)を話していても、険しい表情で腕組みをしていたりすると、相手は話し手の内容よりも表情やジェスチャー(非言語領域)で話し手は内容を理解する(この場合だと怒っていると捉えられやすい)ということです。なので授業者は板書や分かりやすい説明はもちろんのこと、伝えたい内容がより伝わるための所作も必要なのです。

 

声を構成する四要素

声といってもジャイアンのような野太く低い声もあれば、おしりかじり虫の声優で有名な金田朋子さんのように甲高い声もあったりと多種多様にある声は五つの要素に分解できます。

声量

声量=声の大きさです、声量の基本は教室の大きさに合わせることです。例えば大学の講義室のような大部屋において、小声でしゃべったりすると聞き洩らしたり、聞くことに集中しすぎて内容が入ってきにくかったりします。またその逆も然りで小さい部屋で大音量で話をするとストレスがかかって内容の理解に脳のメモリが使われにくくなります。
ということで最適な声量とは、教室の一番遠い生徒が聞くことに対してストレスのかからない程度にすることです。

音域

声の高さのことです。一般的に音域の高い音は聞こえやすく、逆に音域が低い場合は聞こえにくいです。この性質を利用すると、前回のブログで「指示が通るまで待つ。」と言いましたが、より早く生徒をさっと前を向かせたかったら「大きく、手を1回たたく。」は効果的です。「パン」と叩く破裂音は音域が高いので生徒達には聞きとりやすいので集中していても気が付くことが多いです。

ペース

話す速度のことです。僕の授業はよく生徒から「速い」と言われます。
これは筋トレと同じ原理で、筋トレの場合は筋繊維を断裂させることで、次に同じ負荷でも筋繊維が切れないように筋繊維が太くなる現象(超回復)を利用して筋肉量が増加します。授業内でも同じで、生徒全員が聞きやすいように配慮することは実は場の雰囲気は緩んだ状態になりやすく生徒の集中度も低くなりがちです。生徒が緊張感をもって授業に集中させるためには、ある程度負荷がかかる程度のペースで話をしましょう。こうすることで生徒が聞き洩らさないようにと集中度があがり、授業にも緊張感が生まれます。ただし、運動会等の学校行事で疲れ果てた状態で授業に来ている生徒が多い場合は、早いペースで話をしてもついてこれないのであえてゆっくりと話をしてました。このように場の緩急には話すペースが大きく影響しているのです。

抑揚

最後に抑揚です。法事のときのお坊さんのお経の読み方が例としては分かりやすいと思います。導入部分は抑揚がなく淡々と進んでいきますが、山場になると一気に音読ペースを遅くして声量も大きく抑揚をつけて読まれますよね?こうすることの一番の効果は、ポイントが明確になることです。話者が一番伝えたいところでは意図的に抑揚をつけてしゃべると生徒達にも伝わりやすいです。

ジェスチャーは大げさにやることに意味がある。

コロナ禍でマスク生活も2年が経とうとしていますが、マスクを日常的につけることになって授業者として失った一番大きい武器は、「表情」です。授業者側の立場で言えば、生徒の表情が見えないことで生徒の心理状態を把握しにくくなりました。生徒側の立場で言えば、先生の声はもちろん、表情が伝える感情が拾いにくくなり、授業内における説明の濃淡が感じ取りにくくなっているのです。そういう環境だからこそ、ジェスチャーは表情を補う最適な手段なので、以下紹介する内容を参考にしてみてください。

手振り

私がイメージするのはオーケストラの指揮者の手振りです。手を伸ばすことで生徒の注意は引くことができますし、手を伸ばしたまま移動すれば板書の視線誘導もできます。また、発問した生徒が正解した際には褒めの言葉とともに親指を立ててあげるとより褒めの演出もできます。説明を一通りし終わったタイミングで大きく手を広げると、「みんなわかった?」と言葉を発することなく生徒に発問した状態になります。このように多用な場面で使えるのでやってみてください。手振りを使うときのコツは大げさにやることです。ここはボンジョビ大好きアメリカン牧先生の独壇場ですが牧先生はこの手振りはとてもわかりやすいです。日本人は基本はシャイなので皆さんがやっているレベルでは案外動作は小さいので気持ち大袈裟にやるとちょうどよい感じになります。歌舞伎や演劇の俳優が大げさにするのと同じ理屈です。

目配せ

目配せが効果的かどうかの判断ポイントは、生徒と何回目を合わせたかです。
是非、先生2人ペアでやってみてほしいのですが、2人向かい合わせで座ります。そのうえで聞き手の先生は目を合わせない、もしくは顔を横に向いた状態で話を聞いてみてください。次に、目を見て話しを聞いてみてください。目を合わせることで「自分に話をされている。」気持ちになりませんか?このようにポイント説明の際に生徒と「目を合わせる。」ように全体に視線を右から左へ、奥から手前に流しながら説明します。コンマ何秒生徒の方に顔が向いて目を合わせることで生徒達が受け身ではなく主体的に授業に参加せざる得ない環境になります。

動き

授業中に先生方はどんなことを意識して動いていますか?
私が意図的に行う動きとしては視線誘導のためです。例えば数学の解説の際にまずはポイントをおさらいしたい場合は、ポイントの板書部分に立ちポイントの説明をしつつ、解説のある場所まで説明をしながら移動します。まるでバスガイドさんのように手の動きも入れながら動くことで生徒たちの視線を一緒に動かすために自分が動いていました。また、よく説明しながら前後に時々動くこともありました。これは、教室の後ろの席は緊張感が薄くなりがちなので授業者自身が近づいていくことで緊張感を高める効果があります。このように動くだけでも生徒たちに緊張感を生むことができます。

動作×声 = ステータス

実は、この動作や声といった所作全般を私はステータスと呼んでいます。ステータス(社会的地位、身分)によって人の印象が大きく変わるのはご存じですか?このステータスを上げ下げするコツがあるので最後に紹介します。身分の高い印象を与えたい場合のコツは、①動作はゆっくり、大きく、②話すスピードはゆっくり、③姿勢は胸を張る です。逆に身分の低い印象(小者感)を与えたい場合のコツは、①動作は早く、小さく②話すスピードは早く、③姿勢は前かがみ。にすればいいのです。授業にはさまざまな場面があります。式典のような厳かな緊張感の雰囲気のときもあれば、吉本新喜劇のような楽しくポップな雰囲気のときもあります。そのすべては生徒に効果的に授業内容を伝えるための舞台装置です。集団授業の先生方は欠席者対応のために授業を録画されていると聞いています。是非、他の先生方と一緒に自分の授業を映像で確認してみてください。自分が認識していることと他者の認識を確認し、自分と他者の間にある認識のズレが減ると生徒からの授業の評価はさらに高まりますし、生徒の学習効果もあがります。

 

いよいよ来週から春期講習です。新しい出会いの時期です。いつも以上に声量大きめ、動作大きめ、アゲアゲテンション↑↑で元気で明るい印象を持ってもらって1人でも多くの外部生を入会に持っていきましょう。

 

講習会に突入しますので暫しブログはお休みさせていただきます。次回の更新は4月9日(土)を予定しています。内容は、生徒指導をテーマに書きます。